田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

神話で読み解く鎮魂の作法 〜熊野と出雲をつなぐもの〜

黄泉の国、根の国、妣の国 これらは死者の国という意味です。古事記や日本書記の神話の中に出てきますね。国産み、神産みの神であるイザナミは、出産後に亡くなり、黄泉の国に向かったとされています。イザナミの亡くなった地は、古事記では出雲、日本書記で…

脱ニューヨーカーの有機農業挑戦記

「きれいは汚い、汚いはきれい」 シェイクスピアの4大悲劇の一つとされている『マクベス』の冒頭のセリフです。いろいろな解釈があるのでしょうが、私は美醜の親近性という意味に捉えています。通常、きれいなものと汚いものは、正反対の概念であり、遠く隔…

知の巨人、南方熊楠と地域主義

南方熊楠とは、いかなる人物であったのか。一般的には明治、大正、昭和を通して活躍した博物学者とされていますね。南方熊楠は多面的な活動を行った人物であり、一面的には捉えられない人物です。学者としては、人文、社会、自然科学すべてに渡る学問を研究…

マッチングアプリが招く社会の分断とは 〜現状満足階級の台頭と文明の衰退〜

アマゾン、メルカリ、エアビーアンドビー、ユーチューブ、ほとんどの方はこれらのサービスを利用したことがあるのではないでしょうか。私もよく利用します。いわゆるマッチングサービスです。マッチングとはつなげるという意味です。メルカリであれば、売り…

人間の終わり? 〜AI神話を再考する〜

最近、AI(人工知能)について様々な議論、報道がなされていますね。主に三つの観点があるかと思います。 一つ目は技術的観点です。AIはどのような技術で何が出来て何ができないのか等です。二つ目は社会経済的観点です。AIの進化によってどのような仕事が消…

追い上げられる国の経済政策はいかにあるべきか

日本経済は衰退途上にある。殆どの人はそう考えているのではないでしょうか。実際にその通りです。失われた20年を通して、個人の実質所得は減少しています。経済規模では中国に追い抜かれました。東南アジア、インドなどの新興国からは追い上げられています…

アメリカで流行している「古い牛肉のステーキ」とは

最近、アメリカで古い牛肉のステーキが流行しつつあるようです。「古い」というのは、いわゆる腐りかけの肉という意味ではありません。今流行りの熟成肉とも異なります。熟成肉は牛肉をドライエージングなどの方法で一定期間寝かせて、うまみを引き出した肉…

レトロモダンの可能性とは 〜大阪・空堀商店街を散策して〜

レトロモダンとは、新旧融合のさまのことですね。懐かしい趣の中に、現代的、未来的な洗練を感じることです。温故知新とも言えます。例えば、最近都市部などで流行している古民家を改装したお洒落なカフェなどです。 本日、大阪の中心部に近い場所にある空堀…

村上春樹に学ぶ文章の極意とは

「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」 アメリカの作家、レイモンド・チャンドラーの文章です。今や世界的作家となった村上春樹さんは、文章の極意をこの表現の中に見ています。作家の村上春樹さんと川上未映子さんの対談集『みみ…

源実朝の一生 〜滅びの美学と秋の思想〜

ヤマトタケルノミコト、源義経、楠木正成、忠臣蔵の赤穂浪士、西郷隆盛。日本人の愛する歴史上の人物といえば、これらの人物の名前があがるのではないでしょうか。ヤマトタケルノミコトは伝説上の人物ですが、実在の人物をモデルにしていると思われます。こ…

恐るべき人体部品産業の実態とは

人体を機械の部品のような商品として扱う産業が世界中で拡大しているようです。これは、一部の欲に目が眩んだ闇商人や、生命を操作したいという好奇心に駆られたマッドサイエンティストのみによる所業ではありません。アメリカでは、大企業、一流の科学者、…

消えゆく街並みを惜しんで 〜名古屋駅界隈の古今東西〜

名古屋駅周辺は再開発が進み、現在では国内有数の超高層ビル群を有するエリアです。オフィス街であり、お洒落なブティックや飲食店などが立ち並ぶ場所です。東京の丸の内、大阪の梅田のような場所です。2027年のリニア開通に向けて、更なる再開発が進行中で…

落差日本一の滝を見て想う無常なること

富山県の立山連峰にある落差日本一の滝を訪れました。その名は、称名滝です。まさに絶景でした。 なんと落差が350mもあります。当日は山上に霧がかかっており、霧の中から大量の水が轟音を立てて滑り落ちてくる様子は圧巻でした。砕け散った滝の水が霧状の水…

ヨーロッパ文明の源流、ケルト文化と日本を繋ぐものとは 〜循環と生成の世界観〜

ケルトとは、ヨーロッパ文明の基層を成す文化の1つです。ケルトは、もともとヨーロッパにいたのではなく、前4500年頃に広大なユーラシア大陸の草原から移動し、ヨーロッパの最西端に到達しました。現在のフランス、ベルギー、アイルランド、イギリス、スペ…

世界一危険な漁に挑んだ日本人の物語

本州最南端の地、和歌山県串本町の潮岬を訪れました。台風襲来の際に、荒れた海の様子がテレビでよく放映されるところです。実際に潮の流れが速く、波も高い航海の難所です。 かつてこの地からオーストラリアの木曜島に渡って、世界一危険と言われていた白蝶…

百年の孤独と永遠についての物語

「さよならだけが人生だ」 井伏鱒二 「人生は崩壊の過程だ」 フィッツジェラルド 人生の虚無や孤独を語った言葉ですね。では、彼らはいわゆる厭世家、ニヒリストだったのでしょうか。そうではないと思います。理想を追い求めて行きた人びとでした。心の中に…

トナカイ遊牧民の世界観とは 〜生と死の分断を超えて〜

トナカイというとサンタクロースを思い出す方が多いですよね。北欧のイメージが強いかもしれません。今回紹介するトナカイ遊牧民は、ロシア極北シベリアのカムチャッカ半島に暮らしています。彼らはコリヤークと呼ばれている先住民族です。 北海道大学教授で…

雨の日は憂鬱、は本当か

梅雨真っ盛りですね。雨が降るとなぜか気分が乗らないですよね。なぜなんだろう。作家の川上未映子さんは、『僕はもう、うきうきしない』というエッセイの中で、雨の日はうきうきしない気持ちについて書いています。なるほど、と思いました。 川上未映子さん…

田舎の人はなぜ声が大きいのか

私は都会から田舎に移住して、田舎の人の声の大きさに驚きました。私自身、魚市場で働いているということもあるでしょう。市場は喧騒に包まれており、大声で話さなければ、伝わりません。漁業関係者に関わらず、田舎の人は、概して声が大きい印象があります…

「美は人を沈黙させる」〜小林秀雄の芸術論とは〜

小林秀雄は、難解な文章で知られている文芸評論家、批評家ですね。近年のセンター試験で小林秀雄の『鍔』が出題され、高校生には難し過ぎるのではないかと話題になりました。確かに小林秀雄の文章自体は難解ですが、思想そのものは非常にシンプルに思えます…

3Dプリンターが変える世界、消費者が生産者になる日は近い!

3Dプリンターは、世界を大きく変える可能性を持っています。3Dプリンターとは、データを基に、立体物をプリントするデジタル工作機械です。例えば、靴などを作ることができます。 今までは一般の消費者が製造業者になることは、非常に難しいことでした。なぜ…

スコッチ・ウィスキーが由緒ある伝統にサヨウナラ!

ハイボールなどでウィスキーを飲む方が増えていますよね。スコッチ・ウィスキーは、世界で最も飲まれているウィスキーです。イギリスの法律でスコッチ・ウィスキーの定義がなされています。主要な点を述べます。スコットランドの蒸留所で水と発芽した大麦か…

進化した「人工肉」がアメリカで急速に普及、その実力とは?

植物から作られた人工肉がアメリカで急速に普及しています。最近、アメリカのメディアを見ていると、人工肉関連の記事が多く出てきます。ニューヨークタイムズ紙、ウォールストリートジャーナル紙、ファストカンパニー誌の記事を紹介します。 ファストカンパ…

意外にも中国ではあまり白飯が食べられていない

昨日、三重県津市のホテルで朝食を食べていた時に中国人の団体客に出くわしました。彼らが何を食べるのかを観察していると、意外に大半の方々が洋食を食べていました。パンにスクランブルエッグ、ソーセージ、ヨーグルトなどです。中国では洋食化が進んでい…

幻想のグローバル主義〜多様性の衰退〜

「これからはグローバル化の時代だ」 「様々な考え方や文化が交流する時代においては、多様性を尊重しなければならない」 もっともな考え方に聞こえます。では、グローバル化と多様性の尊重は、両立可能なのでしょうか。私は不可能だと思います。なぜならば…

人はなぜ第一印象に惑わされてしまうのか。

「人を見かけで判断してはいけない」 という、ある種の道徳律がありますよね。これを逆説的に解釈すると、人間は見かけで人を判断する傾向があるという意味になるかと思います。少し前に『人は見た目が9割』という本が流行りましたね。日常生活においても、…

衰退する漁業を救う切り札となるか、帆船で漁業!

漁業で使う船といえば、燃油を使ったエンジンで動く船を思い浮かべる方々が多いでしょう。風を受けて走る帆船なんて古い、と思われることでしょう。実は今、海運業界で帆船に注目が集まっています。なぜか、それは風力が地球に優しい、エコエネルギーだから…

田舎ユートピア論はなぜ危険なのか〜アジア主義者の挫折〜

田舎は、不便で経済的に疲弊している悲惨な場所なのでしょうか。以前、『田舎暮らしは悲惨か』というブログでこのような考え方に対する反論を書きました。田舎は都会暮らしの行き詰まりを打開する可能性を持った豊穣の地であると。では、田舎は豊かな自然、…

都市の興亡 〜明日香村と香港を繋ぐもの〜

本日は奈良の明日香村を訪れました。 今から1300年ほど前の飛鳥時代に日本の都だった場所です。日本最古のお寺、飛鳥寺や石舞台古墳などが有名で日本史の授業にも出てきますね。 甘樫丘から見た明日香村です。 かつて日本の中心として栄えた都、今では、のど…

『コンビニ人間』と現代人の生態系

「普通であること」とは何を意味しているのでしょうか。2016年に芥川賞を受賞した村田沙耶香氏の小説、『コンビニ人間』を通して、普通であることの意味と現代人の生態系について考えてみます。 「あの人、普通じゃないよね」 ここで使われている「普通」は…