田舎暮らし in 熊野

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マッチングアプリが招く社会の分断とは 〜現状満足階級の台頭と文明の衰退〜

アマゾン、メルカリ、エアビーアンドビー、ユーチューブ、ほとんどの方はこれらのサービスを利用したことがあるのではないでしょうか。私もよく利用します。いわゆるマッチングサービスです。マッチングとはつなげるという意味です。メルカリであれば、売りたい物がある個人とそれを買いたい個人をつないでくれますね。アマゾンで買い物をすればAIがオススメの商品を勧めてきますし、ユーチューブを視聴しているとオススメの動画が表示されますね。つなげる場を提供するという意味ではプラットフォームビジネスとも言えるのかもしれません。便利でいいことずくめのように思えるマッチングサービスにも弊害があります。今、世界的に注目を集めているアメリカの経済学者、タイラー・コーエンの著書「大分断 格差と停滞を生んだ「現状満足階級」の実像」を通してマッチング志向が招く社会の分断について考察してみます。

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コーエンは、アメリカを発展させて来たダイナミズムを現代アメリカ社会は失いつつあると論じています。起業家、移住経験者の減少や社会階層の分断などに現れています。現状満足志向が社会を停滞させていると論じています。現状満足志向を強化した一つの要因としてマッチング志向をあげています。

 

マッチング志向の弊害を3点あげます。一つ目は思考力の減退です。何かを売りたい人、買いたい人は必死に相手を探す努力をしていました。今ではマッチングサービスを利用したら、AIがマッチングしてくれますね。楽ではありますが、当然思考力は落ちます。二つ目は視野が狭くなることです。スポティファイなどの音楽ストリーミングサイトを利用したらば、簡単に曲を視聴できます。少し聴いて気に入らなかったらもう終わりです。かつてであれば高価なアルバムを購入し、最初はあまり惹かれなくても何度も聴く内に心を惹かれるようになった歌もあったでしょう。所謂セレンディピティです。一見遠道に思えても、その過程において予想外の素晴らしい出会いに遭遇する可能性があるということです。三つ目は社会階層の分断です。例えば、オンラインの出会いマッチングサービスです。アメリカで2005年から2012年に結婚したカップルの3分の1以上はオンラインで知り合っているそうです。マッチングサービス利用者は相手に求める条件を絞り込みやすいですね。年収、職業、教育水準などです。結果的に似たような社会階層の人同士が結婚する「同類婚」が昔より増えています。出会いマッチングサービスは、社会階層の固定化、分断を即してしまう傾向にあるのです。

 

いかがでしたでしょうか。マッチングサービスは便利である反面、思考力の減退や視野狭窄、社会階層の分断をもたらすという負の側面もあるという話でした。技術革新を手放しで礼賛することはできないと思います。ドイツの哲学者、歴史学者のO・シュペングラーは、主著「西洋の没落」の中で文明の衰退期において技術信仰が広がると警鐘を鳴らしています。技術教信者が増えている現代日本は、文明の衰退期に入っているのかもしれません。そうでないことを切に祈ります。