田舎暮らし in 熊野

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3Dプリンターが変える世界、消費者が生産者になる日は近い!

3Dプリンターは、世界を大きく変える可能性を持っています。3Dプリンターとは、データを基に、立体物をプリントするデジタル工作機械です。例えば、靴などを作ることができます。

 

今までは一般の消費者が製造業者になることは、非常に難しいことでした。なぜなら、多額の設備投資、熟練技術等が必要だったからです。3Dプリンターの普及によって、個人のデスクトップでデザインし、小さな工房で製造することが容易になりました。高度に分業化した現在の社会において、消費者と生産者は分離している状態ですよね。3Dプリンターの登場によって消費者と生産者が再び融合する可能性が高まっています。昔の人々は自分や家族の服、食料などを自分で作っており、消費者兼生産者である場合が多かったです。その意味で捉えると、3Dプリンターは、過去のライフスタイルへの回帰を即する先端テクノロジーと言えます。

 

3Dプリンターが世界を大きく変える可能性があると考える理由は3点あります。

①生産、流通、消費のかたちを大きく変える。

②物流量が激減する。

③人間が生命の全体性を回復する。

 

①生産、流通、消費のかたちを大きく変える。

食器を例にとって考えてみます。大まかに言って、食器に関わるのは、食器製造業者、その食器を売るお店、そしてその食器を買う消費者の三者ですよね。もし、3Dプリンターが普及したら、消費者がこの三者を兼ねることになります。自分で食器をデザイン、製造、消費することになります。製造業者、流通業者は壊滅的なダメージを受けるでしょう。

 

②物流量が激減する。

製造、流通、消費の間には空間的な距離がありますよね。同じく食器を例にとります。製造は中国、販売はネット通販、消費は自宅とします。この距離を埋めるのは、物流の役割です。まず、中国の製造工場から船や飛行機、トラックを使って、ネット通販会社の倉庫に食器が運ばれます。次に、その倉庫から消費者の自宅に宅配便で運ばれることになります。3Dプリンターが普及すると、物流は限りなくゼロに近づきます。自宅のパソコンで食器をデザインし、そのデータを3Dプリンターに入力したら、出来上がりです。物流は自宅内で完結します。物流業者にとっては大打撃です。実は、DHLなどの世界大手の物流業者は、3Dプリンターの脅威を認識しています。今後は既存の物流業者が3Dプリンターを使って、製造業に参入する可能性があるとレポートしています。

 

③人間が生命の全体性を回復する。

思想、哲学的な論点です。現代社会は、複雑化し、高度に分業化が進んでいます。個人は、文字通り社会の小さな歯車と化しています。全体的存在として生きることは難しい社会です。このことは、現代社会の思想的危機につながっていると思われます。自分は社会の歯車でしかないとの思いから来る不全感、自分の人生を自分で統御できていないという空虚感等々。3Dプリンターは、人間が全体性を回復するための一助となるかもしれません。自らでデザインし、製造し、消費する。全体性を回復し、自分の人生を自分でコントロールしているという生きがいを得ることができるようになるかもしれません。

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編集者の菅付雅信さんは『物欲なき世界』という本の中で、3Dプリンターの実用事例等を紹介しています。本文を引用します。

「世界的に広がるメイカームーブメントを国内で体現する象徴的な場所のひとつがファブラボ鎌倉。ファブラボとは「人々にデジタル工作機械を利用する機会を提供することで、個人による発明を可能にする」をコンセプトにしたメーカーズラボ(ものづくり工房)」

実際に動き出しているのですね。

 

ここまで3Dプリンターの可能性を述べてきましたが、当然課題もあります。現在の技術水準では、精密機器のような高度な製品は作ることはできません。既存の製造業者、流通業者、物流業者に与える壊滅的影響を考えると、社会的、経済的な影響が大き過ぎてすぐには進まないでしょう。銃のような危険物を個人が簡単に製造できてしまう危険性もあります(これは実際に起こった事件です)

 

3Dプリンターには、様々な問題、課題がありますが、今後の社会を変え得る大きな可能性があることに変わりはないと思います。3Dプリンター関連のニュースから目を離すことができないですね!

①生産、流通、消費のかたちを大きく変える。

②物流量が激減する。

③人間が生命の全体性を回復する。