田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

コロナは世界をどう変えたのか 〜コロナ狂騒曲の終わりに〜

ようやくコロナ狂騒曲が終わろうとしています。 WHOは5/5に新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を解除し、日本でも5/8に5類感染症に移行となりました。コロナが消滅したわけではありませんが、今後は季節性インフルエンザのようなウイルスとして、人類と…

最強の眼力の鍛え方 

久しぶりにブログを書きます。 熊野を離れ、名古屋でお店を経営することになりましたので、バタバタしていてなかなか書けませんでした。 今回は柳宗悦の『民藝四十年』という本を基に眼力の鍛え方について書きます。 柳宗悦は明治から昭和にかけて民藝運動を…

尼崎事件とは何だったのか?〜支配の戦略と服従の心理〜

「職業は家族解体業」 尼崎事件の主犯、角田美代子は自らのことをこのように述べていたそうです。 尼崎事件とは兵庫県尼崎市を中心にして起こった、日本中を震撼させた連続殺人事件です。10年前の事件ですが、あまりに凄惨な事件であり、記憶に残っている方…

ゼロベース思考は可能か?

我々は特定の思考の枠組みや、狭い考え方に囚われてはいないでしょうか。ゼロベース思考とは、思い込みや既成概念を一旦捨てて、ゼロから考えることです。果たしてゼロベース思考は可能なのでしょうか。 構造主義を代表するフランスの哲学者、ロラン・バルト…

古代人に学ぶ記憶術の真髄

詰め込み教育は時代遅れ、AIの発展で記憶力はほとんど必要なくなる等々の話をよく聞きますが、本当にそうなのでしょうか。私はそう思いません。何かを記憶するという営みは、想像力を育む源泉になると思います。そして創造力をも。 今回は大阪大学准教授の桑…

『昭和精神史』を読んで

私は昭和58年に生まれ、昭和時代を7年間生きました。私の生きた昭和とは、小さい子供ながらにどこか高揚感に満ちていた時代だったように記憶しています。狂騒的なバブルに突進している時代でした。私が肌感覚として理解しているのは、そのような昭和のみです…

神話で読み解く日本的意思決定スタイルの起源

先日、宮崎県の高千穂を訪問しました。高千穂は古事記や日本書紀の中で、数々の神話の舞台になった土地です。今回は高千穂が舞台になった神話を通して、日本的意思決定スタイルの起源を探ってみます。 日本的意思決定スタイルといえば、集団合議制ですね。強…

究極のさば、『関さば』を産地で堪能!

大間のまぐろ、氷見のぶりと並ぶブランド魚といえば、関さばですね。昨日、産地である大分県の佐賀関漁港の周辺で関さばの刺身を食しました。私は田舎の漁村に住み、漁業関係の仕事をしておりましたので、消費者として視点に加えて、業界関係者としての視点…

田舎で楽しむナイトサファリ!

田舎では夜の帳が下りると、野生動物が動き出します。 私は3年ほど前に名古屋から三重県南部に位置する熊野市に移住しました。熊野市は、前は雄大な太平洋、すぐ後ろには深い山々が連なっており、いわゆる田舎です。私は人口300人ほどの限界集落に暮らしてい…

昔の日本人はどのように酒を飲んでいたのか?〜酒の民俗学〜

若者のアルコール離れが進んでいますね。健康志向の高まり、遊びの多様化、人と人が集まる機会の減少などが原因だと言われています。私の実感としても、お酒を飲まない若者(20代)は確実に増えていると思います。お酒を体質的に飲めない人はさておき、飲め…

古代人の死生観とは? 〜黄泉比良坂を訪れて〜

出雲にはこの世とあの世の境界があると言われています。現在の島根県松江市東出雲町にあります、黄泉比良坂(よもつひらさか)です。古事記の中の黄泉の国の神話に記載があります。先日、島根を旅した際に訪れましたので紹介します。 まず、黄泉の国の神話に…

人工美の最高峰、足立美術館の日本庭園を訪問

先日、島根を旅しました。印象に残った二つのスポットを紹介します。一つ目は安来市の足立美術館の日本庭園、二つ目は東出雲町の黄泉比良坂です。今回は足立美術館の日本庭園を紹介します。 足立美術館は横山大観の絵を中心に、近代日本絵画を主に展示してい…

懐かしのチューペットは何処に

私は小さい頃、チューペットが大好物であった。 チューペットとは、アイスの一種である。細長い形状をしており、凍らせると真ん中でポキッと折ることができ、二つになる。砂糖水に色をつけて凍らした程度の簡素なアイスであり、高級品でもなければ、グルメを…

台所の思想史 〜ナチスの台所〜

「私がこの世で一番好きな場所は台所だと思う」 吉本ばななさんの小説『キッチン』の冒頭の文章です。私はこの本が大好きで何度も読み返しました。とても温かい気持ちになれる本です。台所というと日常生活、家庭などを思い浮かべますよね。対して、ナチスと…

ヨーロッパ人は森がお嫌い?

湿った土や木々の香り、小鳥のさえずり、などなど森を歩くと清々しい気持ちになりますよね。私は本格的な登山はしませんが、近くの熊野古道をよく歩きます。今回は森を例にとって、ヨーロッパ人の自然観の変遷とその背景について考えてみます。 ヨーロッパで…

平家の落人伝説はいかにして作られたのか? 〜祖谷の平家落人伝説〜

昨日、平家の落人伝説で有名な徳島県祖谷渓のかずら橋を訪れました。かずら橋は木のつるで出来た橋です。歩道には割と大きな隙間があり、下を流れる激流が見えてスリル満点でした。 かずら橋のすぐ近くに「琵琶の滝」があります。琵琶の滝の名前の由来が興味…

天空の郷・果無集落で「何も無いこと」の意味を考えてみた。

先日、奈良県十津川村を車で走っていたら、果無集落の道標を見つけました。聞いたことのない名前でしたが、ロマンチックな名前に惹かれて、訪問しました。果無、果てが無い、つまりは終わりが無い、無限、永遠みたいな意味でしょう。 狭い山道を3kmくらい登…

奈良県十津川村の温泉プールを訪問したら、まさかの展開に!

昨日、奈良県十津川村にある温泉プールに行きました。温水プールではなく、温泉プールです。温泉プールは珍しいですよね。十津川温泉は源泉掛け流しの本格的な温泉ですので、期待に胸を膨らませて向かいました。プールに入ると、なんと冷たいではありません…

テスラ的「生き方」とは? 〜イーロン・マスクの伝記を読んで〜

テスラはアメリカの電気自動車メーカーです。最近、トヨタを抜いて時価総額で世界一の自動車メーカーになりました。販売台数ではトヨタの30分の1程度しかないにも関わらずです。しかも利益をほとんど出していません。将来に対する投資家の期待値が高いという…

知られざる熊野の聖地『宮井戸遺跡』とは?

熊野にはこの世とあの世の境があるといわれています。そこは宮井戸遺跡です。ほとんど知られていない場所です。 熊野といえば熊野古道や熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社などが有名ですよね。他にも那智の滝や日本最古の神社と伝えられている花窟神…

香港の歴史 〜東洋と西洋の間を揺れ動いて〜

香港といえば、摩天楼の夜景、繁華街の賑わい、トラムなどの様々な交通機関、グルメなどを思い浮かべますよね。私は2回、香港に行ったことがあります。バケツの水をひっくり返したような賑わいにとても惹かれました。個人的にはスターフェリーから眺める香港…

義賊は民衆の英雄か、もしくは単なる犯罪者なのか?

義賊は虐げられた民衆にとっての英雄であると同時に既存の秩序を乱す犯罪者でもあります。 義賊とは弱きを助け、強きを挫く盗賊のことを指します。権力者に立ち向かうアウトローみたいなイメージです。貧しい民衆などからは盗まず、時の権力者や富める者から…

水俣病闘争とは何だったのか? 〜『苦海浄土』を読んで〜

「海の上はほんによかった。じいちゃんが艫櫓ば漕いで、うちが脇櫓ば漕いで」 (『苦海浄土』石牟礼道子著から引用) 水俣病に苦しみ、命を終えようとしている漁師の嫁御の言葉です。夫と共に海に出ていた頃を懐かしんでいるのでしょう。彼女は夫を残して40…

モラエスの生涯 〜追憶の中に生きて〜

ヴェンセスラウ・デ・モラエス 明治大正期に来日し、日本で終生を過ごしたポルトガル人外交官、軍人、文人です。神戸のポルトガル領事館の総領事を勤めた後、徳島で隠棲生活を送った人物です。先日、徳島を旅した際に知りました。徳島市内にはモラエスを讃え…

政治はなぜ衰退するのか?〜フランシス・フクヤマの『政治の衰退』を読んで〜

民主主義は最終的に共産主義に勝利し、世界は自由な民主主義社会に収斂していく。 アメリカの政治思想家、フランシス・フクヤマは、ベルリンの壁崩壊の数ヶ月前に『歴史の終わり?』という論文でこのように述べました。この予想はある意味で当たりましたが、…

日本人の心の原風景 〜漂泊、放浪、流謫〜

漂泊、放浪、流謫と聞いてどのようなイメージを思い浮かべますでしょうか。ある場合には、自由な旅人のような詩情あふれる、ロマンチックなイメージでしょう。あるいは、定住地を持たずに世界を彷徨う、悲惨なイメージかもしれませんし、住所不定の不審者な…

ある雛鳥の生涯 〜小さきものの死を悼んで〜

昨日、ある雛鳥が短い生涯を終えました。 わずか3日間の命でした。 その雛鳥は私の家の庭にあるポストの上で、すくすくと育っていました。親鳥が苔をせっせっと寄せ集めて作った巣です。ツバメでもスズメでもなく、おそらくウグイスです。半月くらい前に巣が…

海藻が変える未来!〜今、ヨーロッパで海藻が注目されている理由〜

昆布出汁、わかめの味噌汁、海苔巻き、もずく酢、ひじきの煮付けなどなど、日本では幅広く海藻が食されていますよね。おそらく日本人は世界一、海藻好きな国民でしょう。実は今、ヨーロッパでも海藻に注目が集まっているようです。ヨーロッパの放送局、euron…

AIに負けない「人間力」とは? 

AIに負けない「人間力」、それは問いを立てる能力だと思われます。問題意識を持つこと、問題設定能力、常識を疑う能力、もしくは好奇心と言い換えてもいいでしょう。 答えが決まっている事柄に関しては、計算機のような機械が答えてくれます。例えば1+2=3で…

真の知者とは? 〜教養として聖書を読んで〜

知者とはどのような人物を指すのでしょうか。一般的には優れた見識を有し、正しく物事を判断できる人間、となるかと思います。この意味での知者に人間は本当になり得るのでしょうか。聖書を通して、真の知者とは何者かについて考えてみます。 聖書は言うまで…