田舎暮らし in 熊野

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ヨーロッパ文明の源流、ケルト文化と日本を繋ぐものとは 〜循環と生成の世界観〜

ケルトとは、ヨーロッパ文明の基層を成す文化の1つです。ケルトは、もともとヨーロッパにいたのではなく、前4500年頃に広大なユーラシア大陸の草原から移動し、ヨーロッパの最西端に到達しました。現在のフランス、ベルギー、アイルランド、イギリス、スペイン辺りに暮らしていました。古代ローマカエサルによるガリア征服によって大陸ケルトは、ローマの支配下に置かれ、衰退しました。ガリアとは、現在のフランス、ベルギー、スイス西部に当たる地域に位置していたケルト文化圏の国です。ケルト文化は、大陸では衰退しましたが、「島」で生き残りました。現在のアイルランドスコットランドウェールズマン島といった地域、国に当たります。

 

仮装イベントとして日本でも人気のハロウィンは、ケルトの季節祭である「サウィン」を起源としています。ウィスキーの語源もケルト語です。

 

多摩美術大学教授でケルト文化に詳しい鶴岡真弓氏の著書『ケルトの想像力 歴史 神話 芸術』を通して、ヨーロッパ文明の基層であり、現在も島を中心に生き続けているケルト文化の世界観を紹介します。

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ケルト文化の世界観はどのようなものでしょうか。本文を引用します。

ケルト文化がキリスト教文化と大きく異なるのは、後者は始まりがあって終わりがある単一「直線」的な時間観を持っているのに対して、ケルトの世界観は「循環的」で、イメージでいえば「螺旋」的、「渦巻き」的です」

世界をすでにそこに存在しているもとして捉えるのではなく、絶えず変化し、生成するものとして捉えているのですね。具体例を2つあげます。1つ目はハロウィンの起源であるケルトの季節祭「サウィン」です。サウィンは、1年に1度家に戻ってくる祖先や親しい死者たちの霊を家庭のテーブルに招き、静かに供養するお祭りです。この場所において、過去・現在・未来が混交し、死者と生者の境がなくなり、あの世とこの世がつながります。2つ目はケルトの言語観です。ケルトは言霊信仰を持っていました。集団の記憶を文字化することで言語を固定するのではなく、口承によって伝えるという教えがありました。人間の発話する言葉の中にこそ言霊が宿っているという言語観です。

 

ケルトの世界観、日本の世界観と似ている気がしました。日本のお盆には、死者があの世からこの世に帰ってくると信じられてきました。現代の大ヒット映画『いま、会いにゆきます』も死者のよみがえりの話です。いにしえから言霊信仰もありますね。神道祝詞や、和歌には言霊が宿っていると信じられてきました。下の写真はとんこつラーメン屋、一蘭の店内に貼ってあるものです。現代日本でも言霊信仰が残っている証左ではないでしょうか。

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いかがでしたでしょうか。ケルト文化と日本文化は、循環と生成という世界観によって繋がっているのではないかという話でした。ユーラシア大陸の西の果てのケルト文化と、東の果ての日本文化、距離は遠く離れていますが、どこかで繋がっているのかもしれませんね。