田舎暮らし in 熊野

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サバ缶ブームと田舎暮らし体験ブームに見る 二極化する世相

食のトレンドは二極化が進んでいます。一つはお手軽調理品、もう一つは体験型です。

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前者を代表するのは、最近ブームのサバ缶です。サバ缶がブームになっている理由としては、保存が効く、健康的(サバにはDHAが多く含まれている)、味も進化している等があります。一番大きい理由はやはり、蓋を開けたらすぐ食べられる手軽さでしょう。今、頭付きの魚を買って自分で捌く人はかなり少数派でしょう。

 

後者を代表するのは、田舎暮らし体験ブームです。田舎暮らし体験では、自ら食料を確保、調理して食べるという、食が食卓に並ぶまでのプロセスをトータルで体験できます。具体的には農業体験、漁業体験がこれにあたります。私の暮らす熊野にも、都会から田舎暮らし体験にいらっしゃる方が増えています。先週土曜日の読売新聞朝刊の記事で最近、デュアルライフ(二拠点生活)者が大幅に増えているという記事が出ていました。昨年のデュアルライフ者は2011年のそれに比べて倍増しているとのことです。デュアルライフとは、平日は都市で生活し、週末は田舎で農業などをしながら暮らすライフスタイルです。

 

この二つの流れは相反するニーズですよね。一方は手軽さを求めるニーズ、他方は手間をかけること自体を楽しみたいというニーズです。食のトレンドが二極化しているわけです。この食のトレンドの二極化は、食の分野だけに関わらず社会全体の流れを象徴しているように思われます。つまり、ひたすら手間を減らして利便性を求める流れと、全体性を回復しようという流れが同時進行しています。社会が一方的に、ある方向に進んでいくことはないのでしょう。作用があれば、反作用が起きます。

 

全体性の回復ニーズについて詳しく説明します。都市住民に代表される現代人は高度に分業化が進んだ社会に暮らしています。自ら手をかけなくてもお金を出すことで、商品やサービスを手に入れることができます。便利さと引き換えに、主体的に生きているという実感が持ちにくい社会になっているのではないでしょうか。月並みな表現だと歯車のような生き方に虚しさを感じて、なんとか全体性を回復したいという潜在的な欲求があるのだと思います。田舎暮らし体験が流行る背景には、このような都市生活の精神的危機感があるのでしょう。

 

この二極化現象は、必ずしも人や階層によって分断が進んでいるわけではないでしょう。一人の人間の中に2つの欲求が混在していることが多いでしょう。デュアルライフ者が代表しているように、平日は便利な都会生活を楽しみ、休日は田舎で農業に汗を流すといったものです。

 

地方創生や地域おこしを行う際には、この二極化する都市のニーズをいかに捉えて、対応するのかという観点が欠かせません。体験を求めて田舎に来る都市住民にお手軽調理品を出しても喜ばれません。逆に、お手軽調理品を求めている都市住民の住居に、頭付きの魚を直送しても受けません。

 

私は個人的には、体験型に田舎の可能性を感じます。利便性で勝負したら田舎は都市に到底敵いません。田舎にあって都市にないもの それは自分で食料を作って、調理して食べることに代表される生命の全体性だと思います。都市の方々には田舎に来て頂いて、是非田舎暮らしを体験してもらいたいと思っています。