田舎暮らし in 熊野

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ある雛鳥の生涯 〜小さきものの死を悼んで〜

昨日、ある雛鳥が短い生涯を終えました。

わずか3日間の命でした。

 

その雛鳥は私の家の庭にあるポストの上で、すくすくと育っていました。親鳥が苔をせっせっと寄せ集めて作った巣です。ツバメでもスズメでもなく、おそらくウグイスです。半月くらい前に巣が出来ました。親鳥は卵を産み、大切そうに卵を温めていました。

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上の写真は、巣で卵を温めている親鳥です。やがて3匹の雛鳥が誕生しました。4日前の出来事です。ピッピッピっと元気よく鳴きながら黄色いクチバシを巣から突き出して、親鳥にエサをねだっていました。昨日の朝、私は仕事に行く前に巣を覗くと、雛鳥は元気そうに鳴いていました。昼過ぎに仕事が終わり家に帰り、雛鳥の様子を見ようとしたらば、無残にも巣はなくなっていたのです。地面に散乱していました。3匹の雛鳥は巣の残骸の傍らで息絶えていました。1匹はなんらかの生物に食べられた形跡があり、残りの2匹は半分干からびていました。カラスかトンビに襲われたのでしょう。

 

半月くらい前から親鳥による巣作り、抱卵、そして雛鳥の誕生、生育までの様子をつぶさに見てきた私。3日間の短い生涯を終えた雛鳥の無残な姿を見て、不思議な程に心が痛みました。私は野鳥愛好家でもなければ、動物愛好家ですらないです。ペットは飼っていないですし、野生動物にエサをあげたりもしません。そんな私ですが、あまりにも短かった雛鳥の生涯を想うと心が痛みます。

 

冷静に考えると、厳しい自然の掟なのでしょう。弱肉強食、ある生命が生き延びるためには他の生命を犠牲にせざるを得ないという厳粛な自然の掟。私自身、鶏肉も卵も食べます。そんな私が鳥の死を嘆くなど、とんだ筋違いなのかもしれません。それでもやはり悲しいです。命を慈しむ自分、生物の命を奪わないと生きていけない自分、2人の自分がいるということでしょう。フランシス・コッポラ監督の映画『地獄の黙示録』の中の台詞を思い出しました。

“There are two of you.one that loves,one that kills”(あなたの中には2人の人がいる。1人は愛し、1人は殺める)

 

昨日、雛鳥の遺骸を庭に埋葬しました。やがて土に還り、新たな植物を育む養分となることでしょう。

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昨日の朝まで雛鳥が元気に暮らしていた巣は、もうありません。我が家のポストは、何もなかったかのようにぽつねんとたたずんでいます。

 

どこからかウグイスの泣き声が聞こえてきました。我が子たちの死を悼む親鳥の声でしょうか。木々が微かにざわめきました。