田舎暮らし in 熊野

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最強国、アメリカを蝕む知られざる病の正体とは?

現代の最強国はアメリカである、この考えに異論はほとんど出ないのではないでしょうか。経済力、軍事力等々、中国に追い上げられているとは言え、アメリカは現代世界で群を抜いている超大国ですよね。ではアメリカに死角はないのでしょうか。そんなことはありません。政治的二極化、経済格差、貧弱な社会保障制度、根深い人種差別の存在、高い犯罪率など多くの問題を抱えています。今回はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)地理学教授、ジャレド・ダイヤモンドの著書『危機と人類』を通して、日本ではあまり知られていないアメリカの抱えている問題について考えてみます。

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まずはじめに個人的なアメリカ体験、アメリカ観について述べます。私にとってのアメリカは、愛憎入り混じる存在です。小学校2年生の時に親とアメリカ南部アトランタ近郊の街を訪れました。はじめての海外でしたし、ツアー参加ではなく、アメリカ人の家にホームステイしたことで、リアルなアメリカ人の生活に触れることができて、とても印象に残っています。ホームステイ先のアメリカ人は所謂、大富豪でした。広大な敷地に住んでいました。自分の敷地内に何軒か家があり、敷地内を車で移動する程の広大な敷地です。趣味は狩りで、家の中には仕留めた鹿の剥製が沢山飾られていました。ペットはなんとライオン!私が行った時には剥製になっていましたが。怖がった隣人によって撃ち殺されたとのことでした。ライオンと一緒に写っている写真を見せてもらいました。笑顔でライオンの背中に手を回しているではありませんか!当時の私は幼く、アメリカに対する予備知識はほとんどなかったこともあり、大変大きなカルチャーショックを受けました。日本とは全くスケールが違うなあと。

 

それ以降アメリカには行っていませんが、アメリカの音楽や文学には親しんできました。音楽ですと、中学生の時にはビリー・ジョエルをよく聴いてました。『素顔のままで』など大好きです。高校生、大学生の頃はR&Bが大好きでよく聴いてましたね。ディアンジェロエリカ・バドゥなんかがお気に入りでした。もう少し大人になってからはジャズを聴くようになりました。ビル・エヴァンスの陰影のある都会的なピアノ演奏に特に惹かれました。文学ですと、スコット・F・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』は、今でも私の最も愛する小説の1つです。

 

ここまでは私の好きなアメリカについて述べてきました。ある程度の歳を経て、世界史や国際政治などを学ぶ中で、アメリカの問題点も見えてきました。それは国としてのアメリカは独善的過ぎるということです。第二次世界大戦後だけを考えても、アメリカは自国から遠く離れた地で数々の戦争を起こしてきました。朝鮮戦争ベトナム戦争湾岸戦争、最近ではイラク戦争などなど。世界の警察官として、世界の自由民主主義を守るために戦ったという側面もあるでしょうが、自国の軍需産業を富ますため、石油利権を守るためといった国家の「エゴ」も当然あったでしょう。好戦性においてアメリカを凌ぐ国は現代において存在しない、私はそう思うようになりました。そんなわけで私はアメリカに対して愛憎入り混じる思いを持っています。

 

個人的な話が長くなってしまいました。本題に戻ります。日本であまり知られていない現代アメリカが抱えている問題点について考えてみます。政治的二極化や経済格差などについてはよく知られているので省きます。ジャレド・ダイヤモンドはアメリカの抱える問題点として、政治的二極化、経済格差などに加えて、教育水準の低下、低い投票率をあげています。

 

アメリカの教育水準が低下していると聞いて意外に思う人は多いのではないでしょうか。私も意外でした。アメリカといえば、ハーバード、エール、スタンフォード大学など世界最高水準の大学が沢山ありますよね。エリート校は別として、大衆レベルでの教育水準は低下しているようです。アメリカの生徒の数学、科学の理解度や試験の点数は主要民主主義諸国の中でも低いようです。その要因として、政府の教育予算の減少、教師(大学は除く)のレベルの低下があげられています。後者について説明します。アメリカでは教師の社会的地位が低いようです。教師の給与は法定貧困レベルであり、副業をせざるを得ない教師が多いとのこと。よって、優秀な教師が集まらない状況とのことです。教育水準の低下は、経済成長の妨げになり、やがて国力の衰退に繋がっていく重大な問題ですね。

 

次は低投票率について述べます。アメリカの投票率は富裕な民主主義国の中で、最下位のようです。大統領選の行われた年の国政選挙の投票率は約60%、中間選挙の行われた年の投票率は約40%とのこと。アメリカといえば、民主主義のリーダーの国であり、投票率は高いと思っていましたが、そうではないのですね。要因としては、国民の政治に対する無関心の拡大という国民の内面的問題だけではなく、制度的な問題があるようです。アメリカには有権者登録という制度があります。日本だと、投票年齢に達した人には自動的に投票権が与えられますよね。郵便で投票通知書が送られてきます。アメリカでは有権者登録を自ら行わないと投票権は与えられないのです。有権者登録をするためには写真付き身分証が必要です。貧困層は一般的に富裕層に比べて、交通違反の罰金を払っていない等の理由で運転免許証を持っていない率が高いと考えられているようです。結果的に富裕層の投票率は高く、貧困層のそれは低いという問題に繋がってきます。富裕層は莫大な政治献金を通して、政治に大きな影響力を持っています。それに加えて、富裕層の投票率貧困層より高いとなれば、貧困層の政治的影響力はさらに低下します。結果的にアメリカ社会の分断が進み、社会不安が増大して、国力が落ちていきます。アメリカの政治学者、ベネディクト・アンダーソンは国家の本質を『想像の共同体』であると述べています。国家はフィクションによって成り立っていると。もし、ある国の中で、同じ国民であるというある種のフィクションが信じられなくなると、国家は溶解していくのかもしれません。その意味では低投票率は、国家の溶解に繋がる大問題と言えましょう。

 

いかがでしたでしょうか。世界最強国のアメリカといえども、実は様々な問題を抱えているという話でした。日本ではあまり知られていないアメリカにおける教育水準の低下、低投票率について詳しく述べました。対岸の火事と見るのではなく、日本も自らの問題としても捉える必要があると思います。先日、日本の子供の読解力が急激に落ちているという報道がありました。日本の投票率は、アメリカよりは高いですが、先進国の中では最低レベルです。危機意識を忘れずにいたいと思います。