田舎暮らし in 熊野

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地域おこし、成功事例研究が役に立たない3つの理由

シャッター街だった田舎の商店街が活気を取り戻した、移住者が増えて衰退する漁村に賑わいが戻った等々の地域おこしの成功物語がメディアなどでよく紹介されていますよね。

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私は仕事として地域おこし活動を行なっておりますので、様々な地域おこしの成功事例を研究してきました。本を読んだり、セミナーに参加したり、現場を見学して話を聞いたりしてきました。その結果、地域おこしに関して、成功事例研究はあまり役に立たないとの結論に至りました。もう少し厳密に申しますと、成功の結果のみを研究してもほとんど意味がないということです。その理由を三点述べます。

 

①成功事例は似通っている。

②成功事例を真似ても独自性がない。

③成功事例をそのまま別の場所に持っていっても上手くいくとは限らない。

 

①成功事例は似通っている。

活用されていなかった田舎の資源を商品化したところヒット商品になった。単に物を売るだけではなく、物語をつけて売ったところ大ヒットしたなどの話です。マーケティングに関しては、ターゲットを絞る、ニッチマーケットを狙う等です。視点は参考になりますが、突き詰めると似た話が多いです。ある程度研究したら事足ります。

 

②成功事例を真似ても独自性がない。

サバ缶が今ブームになっています。ブームになっているからと言って真似てサバ缶を売っても、同じことを考えて実際に事業化している会社は沢山存在します。差別化できないということです。つまり、独自性がないので、熾烈な競争に巻き込まれて失敗する可能性が高いです。  

 

③成功事例をそのまま別の場所に持っていっても上手くいくとは限らない。

有名な地域おこしの成功事例として高知のひろめ市場があります。ひろめ市場は、単に食品を売ったり、料理を提供する場所ではありません。お酒を飲みながら地元住民や観光客がワイワイガヤガヤと交流できる「場」を提供していることが成功の要因と言われています。現実的な話としては、酒を提供することで客単価を上げている側面もあります。このビジネスモデルはどこでも通用するでしょうか。そんなことはありません。高知は酒をよく飲む文化があります。特に外で大勢で賑やかに飲むことが好きな土地柄です。土地柄に合致したビジネスモデルなわけです。核家族が多く住む都市郊外や、高速のサービスエリアで同じことをしてもうまくいかないでしょう。

 

成功事例の結果を真似ても上手くいかないという話をしました。プロセスに関しては、ある程度普遍化できますので学ぶことはあります。具体的には、保守的で新しい取り組みに消極的な周りをどのように巻き込んで事業化したのか等のコミュニケーション方法などです。

 

私は成功事例よりも失敗事例を研究した方がいいと思っています。理由は二つです。一つ目は現実感があることです。成功事例は結果オーライで美化されている部分も多く、実態が見えにくいです。失敗談に関しては美化する必要も意味もないため、赤裸々な現実を垣間見せてくれます。二つ目は成功事例に比べてバリエーションが豊かなことです。トルストイは小説、『アンナ・カレーニナ』の冒頭でこう述べています。

「幸せな家族はどこも似通っている。だが、不幸な家族には実に多くの形がある」

一部の華々しい成功の陰には無数の失敗の積み重ねがあります。失敗こそが学びの源泉であると思います。

 

いかがでしたでしょうか。地域おこしに関して、成功事例の結果を真似ても上手くいかないという話でした。プロセスからは一部学ぶことも可能です。さらに、失敗からは多くを学ぶことができるという話でした。