田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

破滅に向かうギャンブラー心理と人間の本性とは

創業家3代目大王製紙会長、井川意高氏、106億もの会社資金を私的に流用し、カジノで散財。

 

2011年に世間を騒がせたニュースですね。大王製紙は、エリエールなどのティッシュブランドで知られている大手製紙会社です。井川意高氏は創業家の3代目で大王製紙の社長、会長を歴任した人物です。カジノでの私的使用のために子会社から106億8000万の資金を借り入れて、会社法違反で逮捕、実刑を受けた人物です。井川意高氏は著書『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』の中で破滅に向かうギャンブラーの心理を実体験から生々しく描いています。

f:id:kumanonchu:20190901174008j:image

本文を引用します。

「私がシンガポールにやってきてから、すでに二晩が経過していた。カジノのVIPルームで勝負を始めてから、あっという間に48時間が経とうとしていたのだ。時間の感覚などとっくに消失し、眠気も食欲もまったく感じられない。目の前に配られたカードをめくることだけに、全神経を研ぎ澄ませ、集中していた。いつ終わるとも知れぬバカラの攻防戦に没入する私は、現世にポッカリ口を開けた無間地獄への入り口に、我が半身を突っ込みかけていたのかもしれない」

寝ること、食べることも忘れる程、ギャンブルに熱中してしまうのですね。ではなぜこんなにも熱中してしまうのでしょうか。それは大勝したときの高揚感を忘れることができないからだそうです。あの時は大勝したのだから、今回も勝つはずだ、そんな心理ですね。成功の残存記憶が頭から離れないのでしょう。

 

個人的な話をします。私はギャンブルはしません。ギャンブルは悪である、非合理的で馬鹿らしいと考えているからしないわけではありません。逆に、ギャンブルに熱中しやすい性格だと自覚しているので、あえて近づかないようにしているのです。20歳を過ぎた時に、友人と東京府中競馬場に行きました。最初の賭けに大勝し、500円が2万円にまで増えました。40倍になりました。まさにビギナーズラックでした。この勝利の高揚感が忘れられずに、また勝つはずだと考えて、賭け続けましたが最終的にはマイナスになったのです。この時に自分はギャンブルに熱中しやすい性格だと自覚し、破滅しないために、ギャンブルに手を出さないと決めました。

 

古今東西、ギャンブルは存在します。ちんちろりん、花札、競馬、競輪、スポーツくじ、バカラ、大小等々。世界からギャンブルが消えることはないのでしょう。なぜギャンブルは、ここまで人間を魅了するのでしょう。細かく見ると、成功の残存記憶に囚われるからだと言えます。巨視的に見ると、おそらく、人間の中にはギャンブラー的本性が潜んでいるからだと思われます。個人生活でいえば、計画的人生設計、企業活動でいえば、綿密な経営、事業計画を立てることが重要と言われています。確かにその通りですが、どこまでいっても未来は不確実性に支配されています。最終的には、自分の信じる未来に自らを賭けて、前に進むしかないのでしょう。ケインズはこの心理をアニマルスピリッツと呼びました。人間には、根拠がなくても行動に向かう衝動があるのだと。アニマルスピリッツは、経済社会を動かす大きな力であると述べました。

 

いかがでしたでしょうか。破滅に向かうギャンブラー心理とは、成功の残存記憶に囚われて、ギャンブル依存に陥るというものです。人間の本性には、根拠がなくとも行動に向かうというギャンブラー的な衝動があるのではないかとの話もしました。この衝動が人間社会を動かす原動力になっている面もあるのでしょう。俗悪と崇高、破壊と創造、退廃と先進。二面性のあるギャンブルの魔力から人間は逃れられないのでしょうね。これからも。