田舎暮らし in 熊野

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水産物輸出の可能性とハードル

最近、水産物を含む食品輸出の拡大が続いていますね。年間1兆円の輸出が手の届くところまで来ている状態です。先日の安部首相の施政方針演説でも、政府としても食品輸出をさらに後押ししていく旨の話がありました。私は田舎に移住してくる前に、東京と名古屋で貿易関係の仕事をしておりました。この経験も踏まえて、水産物輸出の可能性とハードルについて書いてみます。

 

水産物輸出の可能性

日本では漁業生産量、消費量共に大幅に減少してきています。海外に目を向けると日本と逆で漁業生産量、消費量共に大幅に増えています。日本の漁業生産量はピークの約三分の一と大幅に減少した一方、世界全体では30年前に比べて二倍以上も伸びています。主な原因は人口増加、健康ブームなどです。寿司など海外での和食ブームもその一因でしょう。日本では人口減少、魚離れ等の理由で魚の需要が今後伸びることはまずないでしょう。海外は違います。爆発的な需要の伸びが見込めます。これは間違いなくチャンスです。事業環境の点でも海外にチャンスがあります。日本は水産関係事業者が非常に多く、もともと競争が厳しいことに加えて、消費者の目が厳しく、事業環境は厳しいです。海外では水産業は、発展途上ですので、まだまだ新規参入の余地が大きいです。基本的に日本産食品は品質に対する信用度が高いので、海外では高値で取引されます。

 

水産物輸出のハードル

しかし、食品輸出は国内取引に比べてハードルは格段に上がります。ですので輸出者は限られている訳です。いろいろ要因はありますが、3つに絞って述べます。

 

1.商取引

2.法規制

3.物流

 

1.商取引

海外と取引するということは、当然言語の問題がまず出てきます。商社を間に立てて間接輸出の形にするならば別ですが、直接輸出をするのであれば最低でも英語ができないと難しいです。商習慣や法律も日本とは異なりますので、決済リスクも大きいです。口約束ではなく、しっかりとした契約書を交わす必要もあります。決済リスクに関しては、輸出者、輸入者双方の銀行を間に立てる取引形態である、L/C決済にすればほぼ問題ありません。ただ、銀行からの信用がなければそもそも不可能ですし、手数料も取られます。貿易においても国内取引における銀行振込のようなもので便利なT/T決済があります。ただ、後払いが前払いかで厳しい交渉になります。貿易実務の知識は必須です。

 

2.法規制

国内でもそうですが、海外においても生死に直結する食品に対する規制は厳しいです。当然、国ごとに法規制は異なりますので、輸出する国の法規制に合わせた許認可を得る必要があります。水産物に関して、香港やシンガポールの規制はほぼないので難易度は低いです。EU、中国本土などは厳しいです。

 

3.物流

水産物は基本的に冷蔵か冷凍での輸送になります。日本のように全国津々浦々クール便が走っている国はまずありません。輸出する国に保冷輸送網(コールドチェーン)が整っていないと、水産物の輸送はほぼ不可能です。海外に到着するまでは、船か飛行機で運びます。船か飛行機かで輸送費、輸送時間は全く異なります。時間で例に取ると、船で日本からヨーロッパの港に着くまでには約1ヶ月かかります。飛行機なら半日です。輸送費はどのくらいの量をどこに送るかによりますので場合によりけりですが、航空輸送は海上輸送に比べるとかなり割高です。数倍のレベルではないです。賞味期限等も考えて最適な輸送方法を考えなければいけないです。物流に関してはフォワーダー(国際輸送仲介業者)などに聞いたら教えてくれます。ちなみに私はフォワーダーに10年間勤めていました。

 

私自身、かつて貿易業界で働いていた経験、世界を旅した経験、そして現在漁業関係に従事する中で、具体的にチャンスがあると思える商品、輸出先について書いてみます。活〆、神経〆した魚を捌いた状態で真空パックにして、海口の肥えた富裕層が通う海外の和食店に販売する。日本では活〆等の品質保持の技術はよく行われていますが、海外ではほとんど馴染みがありません。日本の料理人のように魚を捌くことが上手な料理人は海外では少ないですので捌いた魚に対するニーズは高いはずです。魚種でいうとブリのような脂の乗っている魚の人気が概して高いです。候補の輸出国ですと、需要の大きさ、法規制の緩さ、物流を考えると香港、シンガポールが有望です。ただ、大手などがすでに参入しているので競争は厳しいでしょう。個人的におもしろいと思っているのはイスラエルです。昨年、旅行で訪れました。イスラエルはテルアビブ、エルサレムを中心に今、空前の和食ブームに沸いています。日本から水産物を輸出している業者はほぼいないはずなので、まさにブルーオーシャンです。イスラエルで多数派を占めるユダヤ教の食事規定(コシェル)には十分注意する必要があります。ヒレ、鱗のある魚介類以外は食べてはいけない、となっています。イカやタコはだめということです。

 

いかがでしたでしょうか。水産物輸出の可能性とハードルについて具体的に述べてきました。ハードルが高いと思われた方も多いと思いますが、ハードルが高いということは、参入障壁が高く、競争相手が少ないということでチャンスでもあります。興味のある方は、大きな可能性のある水産物輸出にチャレンジしてみて下さい!