田舎暮らし in 熊野

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実は好ましい 漁業従事者の減少

漁業従事者数は減少の一途をたどっています。平均年齢は50代後半と高齢化も進んでいます。このままでは国内漁業が壊滅し、国産の魚を食べることができなくなってしまい、大問題だと巷では言われています。政府も漁業の成長産業化を喧しく唱えています。私も生存の基盤である食料生産を守ることは非常に大切であると思っています。ただ、漁業従事者を増やしたら問題が解決するのかと考えると疑問符がつきます。

 

なぜ漁業従事者が減っているのでしょうか。端的に言って漁業で食べていくことが厳しい状況だからです。漁業従事者の平均年収は230万程度です。お金ではなく、やりがいが重要だという人もいますが、あくまで少数派です。ではなぜ漁業は儲からないのか。主な原因は魚が獲れなくなっていることです。需要面から見て、日本人の魚離れも確かに原因の一つです。現在の国民一人当たりの魚食量はピークの約三分の二です。供給面を見ると、日本の漁業生産量はピークの約三分の一です。需要の減少より供給の減少が大幅に大きいことが分かります。国内の漁獲量の減少を補う形で増えている輸入品の増大が価格を押し下げている側面もありますが、主要な要因は国内漁獲量の大幅な減少です。私自身、漁業関係の仕事に携わる中で、漁業従事者の話を聞く機会が多いです。昔より魚が増えているという話は聞いたことがありません。一様に魚は減っているという話ばかりです。

 

このように魚が減っている現状で漁業従事者を増やしたらどうなるのかは明らかです。限られた資源をめぐる競争が激化し、漁業従事者一人当たりの所得はさらに減少します。結果的にさらなる漁業離れを招きます。このような漁業の現状を鑑みると、規制緩和して成長産業化するのではなく、当面、規制を強化して資源量の回復を図りつつ、漁業従事者一人当たりの所得を増やしていく必要があると思います。原因と結果を分けて考える必要があると思っています。原因は漁業従事者の所得の低下、結果は漁業従事者の減少です。原因に対応する必要があります。漁業者自身でも所得を増やす努力が必要です。魚を獲って市場に揚げて終わりではなく、加工、販売にも関わる所謂6次産業化に取り組むことで主体的に価格形成力をつけていく等の取り組みです。