田舎暮らし in 熊野

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魚供養とは何か 鎮魂と感謝

魚供養をご存知でしょうか。主に漁業者が漁獲した魚に対する鎮魂と感謝の気持ちを込めて行う供養です。日本全国で行われている中でも、三重県は魚供養がとても盛んな地域の一つなのです。私が住んでいます熊野でも多いです。例を3つあげます。一つ目は二木島の鯨供養塔です。二木島はかつて鯨漁で栄えた場所で、繁栄をもたらしてくれた鯨に対する感謝の意を込めて建立された鯨供養塔が残っています。二つ目は甫母の鮪供養塔です。かつて大津波が甫母を襲い、町は大きな被害を受けました。苦境に陥っていたところ、鮪の大群が押し寄せて町を救ってくれたことに対する感謝の念から供養塔が建立されました。三つ目は今でもお盆に行われている遊木の花火大会です。この花火大会の目的は2つあります。一つ目は先祖供養、二つ目は魚供養です。他地域ですと、志摩地方では牡蠣供養祭が現在でも行われているようです。

 

魚供養には、日本人の生命観や自然観が現れていますね。人が生きるためには否応なく生物の命を奪わなければいけない、そのことに対する申し訳ないという気持ちとありがとうという感謝の念。

 

現在日本の都会に暮らしていると綺麗にパック詰めされた食品しかほとんど見ることはないですよね。実は食品は生物の命を奪うことで成り立っているという峻厳な事実が見えなくなっています。最近の中学校の理科の解剖実験では、なんと煮干しを解剖するみたいです。動物や生魚の解剖は残酷だということで保護者からクレームが来ることが原因のようです。そもそも生物学的に見て、乾燥した魚を解剖することで生物の内部構造が分かるとは思えませんし、残酷という理由で、人間は生物の命を奪うことで生きているという事実を教えないことは、倫理教育を放棄しているに等しい気がします。学校教育において、人間は否応なく他の生物の命を奪うことで生きているという事実をきっちり教える必要があると思います。知識として教えるだけではなく、食料生産の現場見学も必要でしょう。加えて、先生方には魚供養の存在や、そこに現れている生命観、歴史的意味も子供たちに教えて頂きたいものです。