田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

地方を破壊する交通インフラ整備

地方は都市と比べると交通インフラが貧弱なので、地方の生活の質を向上させるためには更なる交通インフラ整備が必要なのではないか。一般的にはこのように思われているかと思います。実は交通インフラを整備することで地方から都市に人が流出しているという実態もあります。都会から地方に人を呼び寄せる求心力ではなく、地方から都会に人が流れる遠心力が働いているのです。私の住む地域では交通の便が良くなったことで、地方から都会に移住する人が増えています。

 

私の住む熊野市には、大きな交通インフラの開通が二度ありました。一つ目は約60年前に鉄道、紀勢本線が開通したこと、二つ目は約10年前に高速道路が開通したことです。60年前の人口は約3万人、10年前の人口は約2万人、現在の人口は約1万7千人です。交通インフラが整備されたことで人口が増えるどころか、大幅に人口減少が進みました。もちろん交通インフラの整備のみが人口減少の原因ではありませんが、地域の方々の話を聞いていると、交通の便が良くなることで都会に出て行く人が増えたとの意見が多数派です。交通の便が良くなったことで今まで泊まりで観光に来ていた観光客が日帰りするようになり、地域に落とすお金も減っているという副作用も出ています。

 

一般的に地方住民は交通インフラの整備を熱望します。私の住む熊野に鉄道が開通した時はまさにお祭り騒ぎだったようです。「鉄道が通ればもう死んでもいい」と言う人もいたようです。鉄道全通の夢は幻滅に終わりました。私は交通インフラ整備が必要ないと考えているわけではありません。買い物、通学、旅行などが便利になり、地域住民の生活改善に大きく寄与したことも事実です。ただ、副作用も大きいということを述べたいのです。「利便性」という都市の考え方に地方が飲み込まれることで、地方が本来持っている「自立性」を失い、都市に人が流れていっているのではないかと思うのです。利便性を唯一の基準としてしまうと、日本で東京に敵う場所はなく、結果として東京一極集中が進むだけでしょう。

 

私は全国津々浦々がミニ東京化されていくことに明確に反対です。名古屋の名駅周辺や大阪の梅田周辺は私には典型的なミニ東京に思われます。名古屋ですと大須の街並みや、大阪ですとミナミの千日前周辺の方が土着性を持っていて魅力的に思います。都会だけではなく、地方にもそれぞれ特性があります。日本全国それぞれの地域が特性を保持しながら国全体で多様性を持った社会であって欲しいと思っています。熊野の特性とは、数々の神話の舞台になったことに現れている悠久の精神文化の存在と、深い山々、地平線の彼方まで続く美しい海などの自然です。これからも大切にしていきたいと思っています。

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