田舎暮らし in 熊野

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アインシュタインは疫病の流行をどのように考えていたのか?

アインシュタインといえば、言わずと知れた天才物理学者ですね。20世紀に最も影響を与えた人物の一人としても知られています。昨日、アインシュタインの演説を読んでいたら、疫病に対する言及がありましたので紹介します。この演説は"The Fate of Our Civilization"『我々の文明の運命』という題で1947年に行われたものです。東西冷戦下における核戦争勃発の危険性に警鐘を鳴らす内容です。アインシュタインはこのように述べています。

 

「もし問題が人間自身の手で生み出されたものでなければ、話は違っているでしょう。すべての人間を等しく危険に晒す、人間が作り出した原爆やその他の大量破壊の手段でなければ話は違っているでしょう。例えばペストの流行が世界中を脅かしているならば、話は違います。そのような場合には良心的な専門家たちが力を合わせて、疫病を撲滅するために賢明な計画を捻出するでしょう。正しい方法と手段について合意がなされた後には、その計画は政府に提出されるでしょう。その計画に深刻な反対が出ることはほとんどなく、取るべき施策について素早く合意に達するでしょう」(自分訳)

 

疫病流行のような自然災害に対して、人間は一致団結して対処するだろうとアインシュタインは述べています。果たしてそうなっているのでしょうか。現在、世界中で新型コロナウィルスという疫病が猛威をふるっています。一致団結するどころか、非難の応酬や社会の分断が進んでいるように思われます。アメリカ政府は発生源の中国や中国寄りのWHOを厳しく非難しています。中国政府はいち早く感染拡大を食い止め、医療品を外国に寄付しており、世界に貢献していると言い張っています。しまいには米軍が武漢に新型コロナを持ち込んだという根拠のない説も展開しました。EU内では深刻な被害に襲われたイタリアなどに対しての財政支援をドイツやオランダなどの豊かな国が渋っています。そのことにイタリア人は激怒しています。日本国内においても政府の対応の遅さや生ぬるさに国民から非難の声が上がっています。感染者に対する差別もあります。

 

対応を誤った人間や組織に対する非難、批判はあって当然ですが、進行中の危機に対処するためには、収束が見えてくるまでは一致団結する必要があると思います。収束後に批判や反省をしたらいいのではないでしょうか。人間は姿の見えない脅威に対しては特に不安を感じます。不安を打ち消すために、分かりやすい敵を見つけて攻撃しがちです。こうなると疫病という危機に加えて、社会不安というまた別の危機をも招いてしまうことになりかねません。

 

いかがでしたでしょうか。アインシュタインは疫病という自然災害に対しては人間は一致団結するだろうと述べていました。現在進行中のコロナ危機を見ていると、そのようにはなっていないと思われます。一致団結するどころか、非難の応酬、社会分断が進んでいるように見えます。危機が収束するまでは、一致団結して危機に対処する必要があるのではないかと思います。収束後に批判や総括をしっかり行えばよいのではないでしょうか。

 

補足:

疫学の世界では疫病の流行を3段階に分けています。endemic(小規模な流行)、epidemic(中規模な流行)、そしてpandemic(大規模な流行)です。現在進行中の新型コロナはpandemicです。アインシュタインはこの演説の中でepidemicを使用しています。厳密に言うと、アインシュタインはepidemicに対して人間は一致団結して立ち向かうだろうと述べているのであって、pandemicに対してはその限りではないと暗示している可能性もあります。