田舎暮らし in 熊野

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ブラック企業に服従する人間の心理とは?

製造業のデータ改ざん、食品業の産地偽装パワハラなど企業の不祥事が絶えませんね。これらの悪事を為した企業人は、果たして極悪非道の悪人なのでしょうか。そうとは言えない可能性が高いです。会社の命令だから、会社に良かれと思って、組織の命令に陰に陽に服従し、結果的に悪事を為したというのが実態に近いと思われます。ドイツの哲学者、ハンナ・アーレントの言う「凡庸な悪」です。組織の命令に盲従することで、誰しも「凡庸な悪」を犯す可能性があります。

 

なぜ人間は組織に服従してしまうのでしょうか。単純に罰が怖いからというのも一因でしょう。企業であれば、組織の命令に従わなければ、解雇、減給、降格などの処分を受ける可能性があります。これらは外在的な要因ですね。今回はアメリカの社会心理学者、故スタンレー・ミルグラムの著書『服従の心理』を通して、人間が権威に服従してしまう内在的な心理過程について考えてみます。

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本文を引用します。

「1.組織化された社会生活は、そこに属する個人に対して生存上の利益をもたらす。2.組織化された社会生活の能力を生み出すのに必要な行動上・審理上の特徴は、進化の力によって形成された。3.サイバネティクスの立場からすれば、自己制御型オートマンを協調的なヒエラルキーに組み込む最も一般的なニーズは、個人の方向性や制御を抑圧し、高次コンポーネントからの制御に委ねることである。4.もっと一般的には、ヒエラルキーはそれを構成する要素の内部で変化が生じないと機能できない。5.社会生活で機能するヒエラルキーは、こうした特徴のすべてで特徴づけられる。6.こうしたヒエラルキーに参加する個人は、必然的にその機能が改変されることになる」

 

1,2は人間は組織を作ることで発展してきたため、進化の過程で組織に対する服従の心理を先天的に持つようになったということです。3,4,5,6は人間は組織に対する服従心理と同時に自律的心理を持っているが、社会生活を送る中で、自律心理と服従心理が対立した場合に、服従心理を優先させる傾向が強いということです。

 

いかがでしたでしょうか。人間は進化の過程で組織に対する服従心理を先天的に持つようになった、自律心理と服従心理が対立した場合に、服従心理を優先する強い傾向がある、という話でした。人間は組織に対する強い服従心理を内在的に持っているのですね。組織の命令だから、組織に良かれと思って、なんでもかんでも組織の命令に服従してしまうと結果的に悪事を為してしまう可能性が誰しもにあります。もちろん組織への服従は、すべて悪事につながると言う意味ではありません。組織の安定のために、服従は必要です。ただ、組織への服従を絶対視してはいけないのでしょう。人間には強い服従心理があるため、意識的に服従心理を疑う必要があると思います。組織への忠誠心が強い、日本人は特に注意した方がいいのでしょう。個人の良心に照らして、あまりに理不尽な組織からの命令であれば、非服従を表明する勇気を持ちたいものです。