田舎暮らし in 熊野

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グローバル社会に潜む落とし穴とは?〜古代グローバル文明の崩壊〜

アメリカでのトランプ大統領の登場、イギリスのEU離脱グローバル化の旗振り役であった二国を中心に反グローバリズムの動きが出てきています。このことの是非を論ずるのではなく、古代グローバル文明の崩壊を手がかりにして、グローバル社会の問題点と対処法について冷静に考えてみます。

 

青銅器時代と呼ばれているおよそ紀元前3000年から紀元前1200年の間にエーゲ海、エジプト、近東地域にグローバル文明が存在していました。ここでいうグローバル文明は、単一の帝国や文明を指すのではなく、複数の文明から成る文明圏を指します。エジプト、ヒッタイトミュケナイ、ミノア、バビロニアアッシリア、カナン、キュプロスなどです。これらの国々は、活発に交易を行い、人の交流も盛んで、文化的、技術的な進歩の時代が何世紀も続いた後、今から3000年程前にドミノ倒しのように次々と滅亡していきました。その後、何世紀にも渡って「世界初の暗黒時代」が続くことになりました。

 

アメリカのジョージ・ワシントン大学古典学・人類学教授で歴史家のエリック・H・クラインの著書『B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊』を通して、古代グローバル文明がどのように崩壊していったのかを考えてみます。

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著書は古代グローバル文明の崩壊の原因についてこう述べています。

「後期青銅器時代エーゲ海・東地中海地域には、個々の社会政治システムがあり、さまざまな文明があり、それぞれがますます複雑になって、どうやら崩壊の危険も高まっていたらしい。それと同時に、交易ネットワークという複雑なシステムも存在していた。相互に依存しあっているだけでなく、その関係において複雑であり、したがって必須の一部のどこかに変化が起きると、とたんに不安定化しやすくなる。つまりここにあるのは、他の部分は快調に動いている機械が、たったひとつの歯車の歯がゆがんだだけで完全ながらくたの山に変わってしまうという状況だ」

相互依存を強め過ぎると、とある場所で起こった危機が広範囲にわたって波及し易くなるということですね。具体的に古代グローバル文明にどのような危機が起こったのでしょうか。戦争、地震、飢饉等であると著書は述べています。混乱の波及現象は、現代グローバル文明にも当てはまります。リーマン・ブラザーズという一企業の倒産が世界恐慌を引き起こしたリーマンショック東日本大震災で被災した東北の製造業の工場が稼働停止に陥ったことでサプライチェーンが寸断され、世界中の製造業に悪影響が及びました。

 

古代グローバル文明の崩壊から何を学ぶことができるのでしょうか。危機管理の重要性だと思います。平時においては相互交流は社会を豊かにします。危機時においては逆に混乱を波及させて、文明の崩壊を招く可能性すらあります。よって、死活的に重要な、食料やエネルギーなどについては、危機発生時に備えて出来るだけ自給できる体制を整えておく必要があると思います。

 

いかがでしたでしょうか。古代グローバル文明は、相互依存を深め過ぎた結果、危機が波及して滅亡していったという話でした。平時においては社会を発展させる大きな力になるグローバル化は、危機時においては逆に作用し、崩壊のドミノ倒しを引き起こすというマイナス面もあるのでしょう。平時においても、常に危機を想定した対策をとっておく必要があると思いました。