「サラダ記念日」と夏の終わり
「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」
俵万智さんの歌集「サラダ記念日」の中の有名な短歌です。「サラダ記念日」は1987年に出版、ベストセラーとなり、現代短歌ブームを巻き起こしました。約280万部も売れたそうです。同年の流行語大賞にも選ばれて社会現象にもなりました。
有名な歌集であることは知っていましたが、読んだことはありませんでした。10年程前に古本屋で100円で売っていたので、なんとなく購入して読んだところ、なんともほのぼのとした気持ちになりました。何気ない日常をもぎたてのトマトのようなみずみずしい感性で描いています。じめじめした暗さや押し潰されるような重たさは皆無です。どこまでもポップでキャッチー、そしてどこか切ない。それ以来、時折読み返している大好きな歌集です。
「サラダ記念日」には全体的に初夏の雰囲気が漂っています。爽やかな潮風が海岸を通り過ぎていくような感じです。「サラダ記念日」を読むと、夏の終わりをしみじみと感じます。「サラダ記念日」に収録されている私の好きな短歌を紹介します。
「思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ」
「向きあいて無言の我ら砂浜にせんこう花火ぽとりと落ちぬ」
「海の青 海のあおさのその間サーフボードの君を見つめる」
言葉って不思議ですね。多ければ多い程、相手に伝わるとは限らない、時には短歌のように無駄を削ぎ落としたシンプルな表現の方が伝わる何かもあるのかもしれませんね。
最後に一番好きな短歌を紹介します。
「愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人」