田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

田舎暮らし、実は最先端のライフスタイル!

最先端の生き方は、田舎暮らしである。

私はそう思います。

 

普通、最先端のライフスタイルというと、東京港区あたりの億ションに住み、六本木や渋谷でIT起業家として働く、もしくは丸の内あたりの外資系金融会社、コンサルタント会社で働く人を指すのでしょう。休日には南青山あたりの高級フランス料理店でシャンパンを傾けながら美食に舌鼓を打つ、ハワイの高級リゾートでバカンスを楽しむ等々。

 

私自身、このような都会暮らしに憧れていた時もあります。確かに魅力的な生き方でしょう。約15年都会暮らしをした後、田舎に移住して地方創生に関わってみて、田舎暮らしこそ実は最先端の生き方であると思うようになりました。私自身の実体験と、地方創生の悲喜こもごもを描いた現在公開中の映画『波乗りオフィス』を通して、なぜ田舎暮らしが最先端の生き方であるのかを述べていきます。

 

この写真は名古屋、新栄にあるミニシアター、名演小劇場の様子です。名古屋に住んでいる時にはよく足を運んだものです。久々に訪れて、『波乗りオフィス』を鑑賞しました。

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『波乗りオフィス』について簡単に説明します。東京でIT企業を経営する徳永は、中小企業が東京でIT技術者を集める困難に直面し、故郷である徳島の美波町にオフィスを移すことを思い立ちます。実際に美波町にオフィスを移して、様々な苦難に直面しながらも、始めは衝突の連続であった地元の人たちと共にビジネスを軌道に乗せるという話です。田舎暮らしの良いところ、魅力だけではなく、問題点や難点もバランス良く描かれており、地方創生、田舎暮らし、働き方改革などに興味がある方の参考になると思います。都会から田舎に移住して、地方創生に関わる私の目から見ても納得できる内容です。実話を元にした映画です。

 

田舎暮らしが最先端の生き方である理由は、全体性を持って生きることができるからです。主体性と言い換えてもいいでしょう。田舎は都会と比べて圧倒的にヒト、モノ、カネ、情報などの資源が不足しています。つまり「ない」のです。「ない」なら自分で創ればいいのです。仕事、食料、人間関係、生活品等々をです。映画の中で主人公の徳永はこのようなことを述べています。

「都会には様々な選択肢があります。しかし、その選択肢は自らが創り出したものではありません。既存の選択肢を選んでいるに過ぎないのです。田舎では自らが選択肢を創り出す必要があります。地域社会と共に新しい何かを創り出す、これこそが最先端の生き方だと思います」

 

この映画の中で最も印象に残ったシーン、セリフは、茶葉作りを営みながら山中の限界集落で一人で暮らす老婆が述べたものです。老婆は、田舎暮らし研修に来ている東京の女子大生にこのようなことを聞かれます。

「おばあちゃん、こんなところに一人で暮らして寂しくないの?」

老婆はこのような返事をします。

「確かにさみしいよ。あなたのような孫と暮らすことができたらなんて幸せでしょう。ただ、私はこの町で生まれて、最後までこの地で生きていくつもりだよ。土砂崩れなどで道路の補修が必要な事も多く、迷惑をかけていることは申し訳なく思ってる。でもなんとか自分の生まれた町で命を全うしたい」

川端康成の『雪国』の文章を借りて述べると、哀しいほど美しい生き方だと思います。この生き方は主人公の徳永のような、新しい何かを創り出す生き方とはある意味で正反対ですよね。昔からの生活を守りながら、出来るだけ自立して古郷に殉じて生きる。これも尊い生き方だと思います。

 

いかがでしたでしょうか。何もない田舎は可能性に満ちています。「ない」なら自らで創り出す、このような主体的、全体的な生き方こそが最先端の生き方であるという話でした。昔からの生活を守りながら古郷に殉じて自立して生きる、このような生き方もまた同様に尊いという話でした。