田舎暮らし in 熊野

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魚食をめぐるユダヤ教のタブー

今回は日本の田舎を離れて、世界の魚食事情とそこから見える多文化社会の実情を書いてみます。

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日本人は魚介類が大好きですよね。一人当たりの魚介類消費量は世界6位です。現代日本において大きな社会規範として魚介類食のタブーは存在しないですね。(地域や個人によっては存在するかもしれません。)実は世界には魚食をめぐるタブーの存在する宗教があります。ユダヤ教です。ユダヤ教の教典である旧約聖書の中に、ヒレとウロコのない魚は食べてはいけないという掟があります。ヒレとウロコのあるタイやブリといった魚は食べることができます。イカ、タコ、貝類等は食べることができません。

 

なぜヒレとウロコのない魚介類は食べてはいけないのか。宗教戒律のため、真実は不明ですが、一説によれば、ヒレとウロコのない魚介類は鮮度落ちが早いため、衛生的観点から食べることが禁止されているのではないかとのことです。漁業に従事している私自身の実感として納得します。確かにタイなどのウロコがしっかり付いている魚の鮮度落ちは遅いです。都会の皆さんが新鮮な魚を購入しようと思ったらば、ウロコ付き頭付きの魚を購入されることをお勧めします。理想を言えば、内臓、エラ、血抜きして真空状態で保存されているものがベストです。カットされた刺身などはもっとも鮮度落ちが早いです。

少し話が飛びました。

 

2年前にユダヤ教徒が多数を占めるイスラエルを訪れた際に、市場を訪れて実際のところを確認してみました。結果を述べますと、イスラエルでもヒレとウロコのないイカなどが売っていました。どこで売っていたかと申しますと、アラブ人地区の市場です。アラブ人は主にイスラム教徒です。(ムスリムの中にもヒレとウロコのない魚は食べない人々はいるようです。)下の写真はエルサレム旧市街地のアラブ人地区です。

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ユダヤ人地区であるエルサレム新市街地のマハネ・イェフダー市場を訪れたところ、クロダイ、ボラのようなヒレとウロコのある魚しか売っていませんでした。下の写真はマハネ・イェフダー市場の様子です。

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イスラエルユダヤ教徒の国というイメージをお持ちの方が多いと思います。実際にユダヤ教徒が多数派ですが、イスラム教徒やキリスト教徒も多数暮らしています。すべての宗教が融け合って共存しているというより、宗教コミュニティごとに分かれて暮らしている印象を持ちました。同じユダヤ教徒でも、超正統派、正統派、世俗派などの区別があります。超正統派の方は厳格にユダヤ教の戒律を守って暮らしています。エルサレムではメア・シェアリーム地区等に集住しています。男性は黒装束に身を包み、もみあげを伸ばしています。女性はロングスカート姿です。

 

いかがでしたでしょうか。ユダヤ教ではヒレとウロコのない魚を食べてはいけない掟があるという話でした。ユダヤ教徒が多数を占めるイスラエルにも、イスラム教徒やキリスト教徒など様々なコミュニティがあり、そこではヒレとウロコのない魚介類が流通していました。魚食をめぐるタブーを通して、自らが実見した多文化社会の実情について書きました。