田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

哀しさと美しさ 〜Speak Lowを聴いて〜

小さな声でささやいて、愛しい人よ

夏の日はあっという間に消え去ってゆく

小さな声でささやいて、愛しい人よ

私たちの一瞬は瞬く間に過ぎ去ってゆく

海にたゆたう船のように

私たちもたちまち別れ離れになる

小さな声でささやいて、ダーリン、小さな声で

愛はつかの間の火花

闇の中にのみ込まれてゆく、あっという間に

どこに行っても明日はすぐやって来る

そしてすぐ過ぎ去ってゆく

時間はたちまち過ぎ去る、愛は束の間

愛は純金 時間は盗っ人

私たちはもう手遅れなの、ダーリン

幕は降りる 、瞬く間に全ては終わる

私は待ってる、ダーリン、私は待ってる

小さな声で愛をささやいて、すぐに

 

ジャズのスタンダードナンバー『Speak Low』の歌詞です(自分訳)歌詞もさることながら、音楽も哀しいトーンでとても美しいです。クルト・ヴァイルという作曲家が作った曲です。クルト・ヴァイルはユダヤ系ドイツ人で後にアメリカに移住しました。Speak Lowは多くのジャズミュージシャンによってカバーされている名曲です。

 

Speak Lowを聴くと、『あの日のように抱きしめて』という映画を思い出します。2014年に公開されたドイツ映画です。第二次世界大戦前後のドイツが舞台です。妻は歌手、夫はピアニストという音楽家夫婦が主人公です。妻はナチスによってユダヤ強制収容所に送られてしまいます。夫との再会を信じて、なんとか生き延びて収容所を出ることができました。夫を必死で探していたところ、周りから衝撃的な事実を知らされます。それは夫の裏切り。ラストシーンで妻は夫のピアノ演奏でSpeak Lowを歌います。このシーンがあまりに哀しく、あまりに美しいのです。YouTubespeaklow phoenixで検索したら出てきます。興味がある方は聴いてみてください。

 

なぜ哀しさと美しさが結びつくのでしょうか。具体的に語ることは難しいのですが、喜怒哀楽の中で「哀」が最も人の心を打つ、心の琴線に触れる何かがあるのだろうなあと思います。喜び、怒り、楽しみはあまり長続きしない気がします。対して、哀しみは永く心に残ります。個人的に好きな映画をあげると、洋画ですと『カサブランカ』『戦場のピアニスト』『あの日のように抱きしめて』、邦画ですと『秋刀魚の味』『津軽じょんがら節』『萌の朱雀』などです。すべて哀しい話なのですよね。私にとって、これらの哀しい話は暗い話ではなく、美しい話に思えます。

 

目を閉じてSpeak Lowに耳を傾けます。

 

Speak low when you speak,love

Our summer day withers away too soon,too soon

Speak low when you speak,love

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