田舎暮らし in 熊野

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神話で読み解く日本的意思決定スタイルの起源

先日、宮崎県の高千穂を訪問しました。高千穂は古事記日本書紀の中で、数々の神話の舞台になった土地です。今回は高千穂が舞台になった神話を通して、日本的意思決定スタイルの起源を探ってみます。

 

日本的意思決定スタイルといえば、集団合議制ですね。強力なリーダーが意思決定し、トップダウンで物事を進めていくのではなく、みんなで意見を出し合い、合意形成をはかりながら物事を進めていくスタイルです。意思決定のスピードが遅い、無責任体質に陥りやすいなどの欠点が多く指摘されていますが、現在でも日本の意思決定の主流は集団合議制ですね。

 

古事記日本書紀の神話の中に集団合議制の起源が描かれています。その神話は天岩戸(あまのいわと)神話です。有名な神話ですのでご存知の方も多いと思いますが、簡単に説明します。高天原(天の上の世界)を治めるアマテラスオオミカミは、乱暴な行いを改めない、弟のスサノオノミコトに対して怒り、天岩戸にこもってしまい、世界は闇に包まれてしまいました。困り果てた、八百万(やおろず)の神々は天安河原(あまのやすかわら)に集まり、対応を協議しました。岩戸の近くで踊り、大騒ぎしてアマテラスオオミカミの気を引くことにしました。気になったアマテラスオオミカミが天岩戸を少し開けたところを、力持ちの神が引きずりだし、世界に光が戻ったという話です。

 

日本的意思決定スタイルの起源は、八百万の神々が天安河原に集まり、アマテラスオオミカミを天岩戸の外に出すための対応を協議したことにあると思われます。

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ここが天安河原です。現在の宮崎県、高千穂にあります。天岩戸神社から歩いて10分くらいのところにあります。川辺の洞窟で神秘的な雰囲気があります。

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周辺には無数の石が積み上げられています。石を積み上げると願いが叶うと信じられているそうです。

 

神話の時代から日本人はみんなで話し合いながら、物事を決めていたのでしょうね。神話というと、虚構であり、大昔の話であって現代人には関係ないと思われがちですが、そうではないと思います。神話的思考は現代人の思考をも規定していると思われます。他のブログでも繰り返し述べましたが、神話をフィクションかノンフィクションかという観点で見てもあまり意味がないと私は考えています。神話が史実かどうかより、古代人が何をどのように考えていたのかを知ることの方が重要だと思います。神話とは古代人の思考の軌跡であり、神話が現代まで残っているということは、現代人にも古代人の思考が受け継がれているのではないでしょうか。日本の意思決定スタイルが神話の時代から現代まで集団合議制であることが、そのことを証明していると思われます。

 

では欧米社会のトップダウン型の意思決定スタイルは、どのような神話的背景を持っているのでしょうか。一神教的世界観があるかと思います。一神教では唯一無二の神が、人間に掟を授け、人間は神と契約を結びます。神と民衆の間に立ち、神の言葉を民に伝えるのは預言者です。預言者は強力なリーダーシップで民を率います。旧約聖書の中に現れる、アブラハムモーセなどです。旧約聖書の『出エジプト記』を読むとよく分かります。モーセがエジプトで虐げられていた、ユダヤ人を率いてエジプトを脱出する話です。欧米社会の強力なリーダーの原型は、預言者にあると思われます。

 

いかがでしたでしょうか。集団合議制という日本的意思決定スタイルの起源は、天岩戸神話の中で語られている、アマテラスオオミカミを天岩戸から出し、世界に光を取り戻すための八百万の神々の合議にあるのではないかとの話でした。この合議の場所とされているのが現在の宮崎県の高千穂にある、天安河原です。神話は単なるフィクション、昔話ではなく、古代人の思考の軌跡であり、現代人にも引き継がれているのではないでしょうか。