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テスラ的「生き方」とは? 〜イーロン・マスクの伝記を読んで〜

テスラはアメリカの電気自動車メーカーです。最近、トヨタを抜いて時価総額で世界一の自動車メーカーになりました。販売台数ではトヨタの30分の1程度しかないにも関わらずです。しかも利益をほとんど出していません。将来に対する投資家の期待値が高いということでしょう。イーロン・マスクはテスラの創業者(正確には共同創業者)、CEOです。破天荒な人物としても有名ですね。最近、ロックダウン命令を破って、逮捕される覚悟で工場を再開させました。人類の火星移住や人間の脳をコンピュータに接続する技術の開発などを進めています。

 

今回はアメリカのジャーナリスト、アシュリー・バンズの著書『イーロン・マスク 未来を創る男』を通して、テスラ人気の理由を探っていきます。 

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テスラが人気を集めている理由、それはテスラ的「生き方」にあると思われます。テスラ的「生き方」とはイーロン・マスクの生き方と同義です。テスラ的「生き方」とは、ある種のクールな生き方といえるのでしょう。壮大なビジョン、未来志向、環境意識が高い等々。テスラの車を買う人々は、単に車を買っているのではないのだと思われます。テスラの車に乗っていると、自分自身がクールな人間になったような気になるということでしょう。  

 

テスラ的「生き方」をもう少し掘り下げて考えてみると、3つのキーワードが浮かび上がります。一つ目は壮大なビジョン、二つ目は強烈な実行力、三つ目は全体性の追求です。順に説明します。

 

①壮大なビジョン

電気自動車を本格的に普及させることで、二酸化炭素の排出量を削減し、地球を救うというビジョンです。他の大手自動車メーカーも電気自動車の開発、販売を急いでいますが、テスラのような強烈なメッセージ性は感じさせません。「電気自動車の波に乗り遅れたら、経営が揺らぐかもしれないから、急いで電動化を進めよう」みたいな守りの姿勢が濃厚に感じられます。テスラの場合は、自動車電動化の波そのものを自ら創り出したことから来る、ビジョンの強さを感じます。

 

②強烈な実行力

イーロン・マスクは壮大なビジョンを掲げるだけではなく、実行に移してきました。テスラは時価総額で世界一の自動車メーカーになりましたし、電気自動車の販売台数でも世界一です。テスラに対しては懐疑的な意見も多いです。私は毎日、アメリカの経済紙、ウォールストリートジャーナルを読んでいます。ウォールストリートジャーナルはテスラに対してかなり懐疑的な立場です(最近、テスラに対して批判的な記事は減りました)テスラは何度も経営危機を経験してきました。一時期、イーロン・マスクはテスラ売却を真剣に検討していたようです。本書によりますと、イーロン・マスクはグーグル創業者の1人のラリー・ページに、「最悪の事態になったらテスラを買収して欲しい」と頼んでいたそうです。なんとか危機を乗り越え、テスラがグーグルに買収されることはありませんでした。

 

③全体性の追求

テスラは部品や研究開発などをできるだけ内製化する方針のようです。大手の自動車メーカーは、エンジンのような基幹品以外は、外注することが多いですね。ビジネス用語でいうところの水平分業モデルです。対して、テスラは内製化を進めることで、製品に対する自社のコントロールを強め、ユーザーの要望に的確且つ迅速に対応できるようにしているようです。

 

いかがでしたでしょうか。テスラ的「生き方」とは、壮大なビジョンを掲げ、逆風にめげずに強烈な意志で実行に移すという「生き方」です。具体的なビジネス手法としては、内製化を進めることで、自社のコントロールを強め、ユーザーの要望に的確且つ迅速に応えるといったものです。テスラ的「生き方」は、アメリカ人の理想とする「生き方」なのでしょう。開拓者精神ともいえましょう。理想を掲げ、未知の大地を不屈の意志で切り拓き、自らの力で未来を創る精神です。開拓者精神は良いところばかりではありません。独善的になりがちですし、周囲との軋轢、対立も出てきます。日本人が理想とする、「和をもって尊しとなす」という「生き方」とは相入れない部分もあるでしょう。ただ、私としては、開拓者精神と和の精神を対立的に捉えたくはありません。二者択一ではなく、補い合う関係でありたいです。日本人は周囲との軋轢を恐れて、自己主張を控えがちです。これは美徳でもありますが、場合によっては物事を停滞させる原因にもなります。一般的な日本人は、周囲と調和する能力は既に高いと思われます。ですので、自分とは違う考えを持つ人、具体的にはイーロン・マスクのような開拓者精神を持った人から意識的に学ぶ必要があるような気がします。