田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

伝説の漂泊民「サンカ」と熊野

「サンカ」をご存知でしょうか。かつての日本にいた漂泊民です。彼らは今で言うテント暮らしをしていたようです。定住せずに狩猟採取を営みつつ、山の中、川辺を転々としながら暮らしていました。竹細工を作って行商したりもしていたようです。  

 

私は大学生の時に、民俗学者柳田國男著『山の人生』という本を通してサンカを知りました。不思議な興味を覚えたものです。平地の民とは隔絶した山の中で自給自足的生活をしている謎の集団、ヨーロッパのジプシー(ロマ)のように移動する民がかつての日本にいたことに驚くと同時に浪漫的感情を掻き立てられました。

 

長らくサンカのことを忘れておりました。本日、図書館で熊野の郷土資料を調査しておりましたら、大正初期まで熊野新鹿周辺にもサンカがいたと言う話を見つけました。平八州史著『伝説の熊野』の一部を引用します。

「サンカは四季を通じ膝までの短い単衣を着ていたが大して寒がりもせず、夜ねるときは焚火をして、その焼砂を地下に埋め、その上にボロギレなどを敷いてねていた、また風呂をわかすには地面を掘り凹めそれに合羽(油紙)をしいて水をため、そばで焚火をしてその焼石を水に投げ入れて湯をわかしていた」

「ある時シシゴ(地名)のサンカ娘が路傍でイワシを焼いて食べ火をあまし、徐福の森近くまで焼いたことがある」

下の写真は火事があったという徐福の森付近の様子です。

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熊野は山深い場所ですので、かつては多くのサンカがいたのでしょう。もしかして今も奥深い山の中にひっそりと暮らしているのかもしれませんね。

 

話は変わりますが、最先端の働き方として最近、「ノマドワーク」が取り上げられています。ノマドとは漂泊民、移動の民といった意味です。IT機器を駆使して、特定の場所に縛られずに働くスタイルをノマドワークと呼びます。スタバなどで仕事をしている人を指すのでしょう。ノマドとは有り体に言えば住所不定、定職なしの人々ですから、前近代的な生活を送る不審者というような否定的イメージで捉えられることが多かったでしょう。ノマドワークが最先端の働き方として取り上げられている背景には、プレモダン(前近代)としてのノマドが、ポストモダン(超近代)的可能性を秘めているという時代認識があるのかもしれませんね。