田舎暮らし in 熊野

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日本最古の神社『花窟神社』を訪れて

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三重県熊野市にある日本最古の神社といわれている花窟神社(はなのいわやじんじゃ)を訪れました。

世界遺産でもあります。

 

日本書紀に国生みの神であるイザナミが眠る場所であるとの記述があり、アマテラスオオミカミを祀る伊勢神宮オオクニヌシを祀る出雲神社より古いのですね。

 

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花窟神社には社殿がなく、巨岩がご神体となっており、いにしえの自然信仰の姿を今に伝えています。

熊野には花窟神社の他にも丹倉神社など、巨岩がご神体の神社がいくつもあり、長い歴史を感じます。

 

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私は熊野に移住して約一年になります。

この地には美しい海、山々等の豊かな自然が残っています。海産物や柑橘類、ジビエ、豚肉などのお肉などなど美味しい食材の宝庫でもあります。これらに加えて、忘れて欲しくないのは、熊野が永く育んできた精神文化です。

熊野の精神文化とは何か。一言で申しますと生と死を内包した二重性です。生の側面から述べますと、海の彼方に理想郷があり、善きものが海の彼方からやってくるという信仰があります。熊野には徐福上陸伝説や神武天皇上陸伝説が残っています。黒潮に乗って流れ着いた難破船を手厚く救助したという記録も多く残っています。このように外に対して開かれた土地柄なのです。

死の側面から述べますと、神話において熊野は根の堅洲国と呼ばれており黄泉の国につながる土地とされています。中世には補陀落渡海という、生きたまま人が箱に閉じこもって船出するという捨身行が行われていました。

ニーチェは処女作である『悲劇の誕生』の中で古代ギリシア文化の中に生を育むようなアポロン的なものと、死に向かう狂騒へと駆り立てるディオニュソス的なものの相克を述べています。

私は熊野の精神文化の中にもアポロン的なものディオニュソス的なものの二重性を感じ取ります。二重性に対する捉え方に関しては、違いを感じます。ニーチェは二つの概念を対立的に捉えているように思われます。対して、熊野の精神文化では生と死は同根であると捉えられていると感じます。海の彼方の理想郷、常世は生の源泉であると同時に死の世界でもあります。

熊野にお越しの際には是非、熊野の精神文化にも触れてみて下さい。比較文化、日本思想史について深く考えるきっかけにもなりえます。