田舎暮らし in 熊野

田舎暮らしの日常、旅行、グルメ、読書について書いています。

人口減少社会の未来

田舎に住んでいると人口減少社会が到来しているとの実感を強く持ちます。私の移住した漁村は、漁業が主要産業で人口250人程の大半が高齢者です。

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人口減少社会の切実な危機感から、内田樹氏が編集した『人口減少社会の未来学』を読了しました。平川克美氏の論考の中に人口減少をくい止める鍵を見出しました。平川氏によりますと、少子化の要因は晩婚化にあるとのことです。既婚者の出生率は上昇傾向であり、女性が子供を産まなくなっているという言説は議論をミスリードする作り話であると述べています。晩婚化が進んでいる要因は複雑であると、氏は認めた上で、市場社会の進展によってお金さえあれば家族に頼らずとも自由に生きていける時代になったことこそが晩婚化を進めてきた主要因と論じています。同様の主張は、フランスの人口学者のエマニュエル・トッド氏などによっても唱えられているものであり、真新しい考え方ではありませんが、日本のメディアでは子育て支援不足や雇用の不安定という論点から人口減少が論じられることが多く、見落とされがちな視点です。

市場社会の原理とは何かというと、氏は私有制と等価交換性と述べています。特に等価交換性について深く論じて、等価交換の原理を絶えざる、関係の清算に置いています。田舎によく見られる贈与の原理とは、貸し借りによって清算がなされるまで関係が続いている状態であり、等価交換とは別の原理であると。

等価交換の原理を持つ市場社会は、人間関係を希薄化し、ひいては晩婚化を招く大きな要因になっているのではないかと感じました。市場社会の到来によって経済的豊かさと自由を手に入れたことで、人口減少が進み、社会が衰退していくというパラドックス 

では今後、持続的な社会を維持するためにはどうしたらいいのでしょうか。おそらく、真理は中間にありで、経済的繁栄を支えるための市場の原理と、安定的な社会を維持するための贈与の原理とを両立させていくしかないのではないかと思います。

田舎が持っている贈与の文化を時代遅れのものであると退けるのではなく、現代社会の危機を乗り越えていくための一つの知恵として活用していく必要があると強く感じています。「都会」と「田舎」は助け合って共存していくことができると信じています。